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小規模個人再生と給与所得者等再生にはメリット・デメリット

小規模個人再生と給与所得者等再生にはメリット・デメリットがある。現状は、小規模個人再生の再生計画案の弁済率のほとんどは最低弁済額程度であるけれども、一部政府系金融機関を除き、債権者の圧倒的多数は不同意を述べていないので、給与所得者等再生のメリットはほとんどない。給与所得者等再生のデメリットである方が大きい。特に、可処分所得額が最低弁済額を引き上げるような場合(しばしば発生する)は、法定多数が不同意を述べる高い可能性があるときを除き、給与所得者等再生ではなく、小規模個人再生を考慮すべきである。実際、現在の全国の個人再生申立件数は、給与所得者等再生より小規模個人再生の方がはるかに多い。

小規模個人再生と給与所得者等再生の二つの手続きが利用可能な債務者の場合は、まず可処分所得額を試算し、その上でどちらの手続きにすべきかを決めるのが安全であるが、資料不足等により、可処分所得額の計算が容易でないときもある。その場合、小規模個人再生を選択するというのも一つの考えである。万一、小規模個人再生が、債権者の不同意多数で失敗に終わったら、次に給与所得者等再生を申し立てればよいのである(もっとも、住宅特則付個人再生の巻き戻し事案の場合は、民事再生法一九八条二項の期間制限があるため、この策は使えないことに注意)。

個人再生は、裁判所によって運用がかなり異なるので、申立先の裁判所がどのような運用をしているのかを、事前に調べておくべきである。手続きの流れの標準スケジュールを定めている裁判所が多いので、それを頭に入れておかないと、手続きを円滑に進める上で支障が生じる。申立先の裁判所で書式を定めていれば、それを用いた方が便利である。もちろん、その書式の使用を法律上強制されることはないし、もしその書式の内容が不当だと思えば、唯々諾々と従うのではなく、問題点を指摘して改善を求めていくべきであろう。

裁判所による運用の違いで実務上最大の点は、個人再生委員を必置とするか否かである。東京地裁といくつかの裁判所は、個人再生委員を必置としているが、大阪地裁を始め他の裁判所は、原則として個人再生委員はつけない。現状では、全国的には前者は少数で、後者が多数である。個人再生委員必置とすると、申立人債務者に個人再生委員の報酬が余計かかることになるが、柔軟な運用(裁判所が個人再生委員の判断を尊重して手続きを進める)が可能となり、債権者に対する手続きの公正が担保できるといわれている。

個人再生委員を原則つけないという運用は、申立人債務者の経済的負担を少なくできるが、裁判所が直接判断することとなるので、硬直的な運用となる危険があるといわれることがある。各地の裁判所は、手続きの標準スケジュールを定めているところが多い。東京地裁の標準スケジュールは、申立てから再生計画の認可決定まで約六ヵ月である。これは全国的には長い方である。東京地裁では、個人再生委員を必置とし、履行の可能性テストのために、債務者に対し返済予定原資の個人再生委員への定期的送金を行わせるため、手続期間が短ければよいということにはしていないのである。

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個人再生に伴う具体的手続きとは

(1)債権者の消極的同意と同意不要
現行法上、小規模個人再生は、通常再生(民事再生法の原則的手続き)の特則、給与所得者等再生は小規模個人再生の特則として定められている。これらの大きな違いは、再生計画認可決定に至る過程の中で債権者の意向がどれだけ重視されるか、ということである。通常再生では、再生計画を認可するには、債権者の法定多数の積極的同意が必要である。小規模個人再生では、債権者の法定多数の消極的同意(不同意がないこと)で足りる。給与所得者等再生では、債権者の同意は、不要とした。給与所得者等再生では、極端な場合では、債権者の全員が反対しても再生計画は認可される(もっとも、同意要件を不要としたため、再生計画案にどれだけの債権者が賛成なのか反対なのかは、特に集計しない)。

(2)可処分所得額要件の有無
個人再生には、再生計画において債務者が支払うべき最低弁済額が定められている。可処分所得額とは、給与所得者等再生に限定して民事再生法二四一条二項七号で定められている最低弁済額要件の一つであり、詳しくはあとで述べるが、債務者の収入や扶養家族の状況等によって金額が変化する。可処分所得額要件があることによって、それがない場合に比べて最低弁済額が引き上げられてしまう事態が、常にではないが、しばしば発生する。事案にもよるが、概していえば、可処分所得額要件があるために、給与所得者等再生を利用すると、小規模個人再生を利用するよりも、多額の弁済をしなければならないことになりがちである。

(3)再申立制限の有無
給与所得者等再生の場合、前に給与所得者等再生を利用して完済したり、破産免責を受けていたりすると、その後当該再生計画認可決定や免責許可決定の各確定から七年間は給与所得者等再生を利用できない(民再二三九条五項二号)。小規模個人再生にはそのような制限はない。

(4)免責不許可事由の有無
給与所得者等再生を利用して完済した人が、その後破産して免責許可の申立てをした場合、免責許可の申立てが再生計画認可決定確定から七年以内のときは、免責不許可事由となる(破二五二条一項一〇号)。小規模個人再生の場合には、こうした免責不許可事由はない。したがって、将来、自己破産免責を利用する事態が発生するかもしれない債務者については、うかつに給与所得者等再生を利用すべきではなく、小規模個人再生を利用した方が安全である。


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個人再生手続きの概要

(1)手続きの特色
個人再生の大きな特色として、次の四つをあげることができる。
(イ)債務減免の強制
任意整理や特定調停では、債務減免に同意しない債権者に対して、それを強制することはできないが、個人再生ではそれが可能である。

(ロ)住宅ローン支払中の住宅維持
住宅資金貸付債権の特則(民再一〇章)を利用すれば、住宅ローンを抱えた債務者が住宅を手離さずに、住宅ローンを除く債務を減免した上で、原則三年、例外最長五年までの分割払いの債務整理をすることが可能となる。住宅ローンを抱えた人が自己破産をすると、原則として住宅を手離さざるを得ないことになるので、どうしても住宅を手離したくない債務者にとっては、住宅資金貸付債権の特則付個人再生は、大変有力な武器となる。

(ハ)資格制限なし
警備員や生命保険外交員等は、自己破産となると、法律上資格がなくなる(もっとも、破産手続開始決定から免責決定確定までの通常四~六ヵ月程度であるが)が、個人再生には、そのような資格制限はない。

(二)小規模個人再生と給与所得者等再生の選択
給与所得者等再生を利用できる債務者は、給与所得者等再生しか利用できないということではなく、小規模個人再生も利用できる。どちらを利用するかは債務者の選択に任されている。選択を誤らないためには、まず両手続きの差異を理解し、次にどういった事案にどちらの手続きがふさわしいかを検討する必要がある。

個人再生の実務

個人再生とは、債務を減免(ただし、最低一〇〇万円は払わなければならないので、債務総額を一〇〇万円未満に減免することは不可)した上で、残債務を原則三年(例外最長五年)間に分割払いすることができる、裁判所を利用した個人の分割払いの債務整理手続きである。以下、手続き全体を概観する。個人再生には小規模個人再生と給与所得者等再生の二種類があるが、再生計画案提出までは、手続きの内容に差異はない。いずれもまず、関係書類を添付して申立てをする。裁判所の開始決定により、手続きが始まる。手続き中は、再生債権の弁済や再生債権に基づく強制執行はできない。

再生債権の調査を経て、債務者が再生計画案(債務の減免率、逆からいえば弁済率を定め、三~五年間の分割払いの基準を示した返済案)を作成・提出する。再生計画案提出後は、小規模個人再生と給与所得者等再生で取扱いが異なる。小規模個人再生では、再生計画案は、債権者の書面による決議に付され、不同意が、「債権者総数の二分の一未満でかつ債権総額の二分の一以下の場合」は可決となり、他に問題がなければ、この再生計画は認可される。給与所得者等再生では、再生計画案は、債権者の意見を聴いた上で、他に問題がなければ、この再生計画は認可される。

すなわち、小規模個人再生では、消極的同意(法定多数の不同意がないこと)という形式ながら、法定多数の債権者の意向によって再生手続きの成否が決せられるが、給与所得者等再生では、再生手続きの成否は、債権者の意向に左右されない。再生計画が認可され、それが確定すると、再生債権は再生計画による権利変更条項(債権の減免率および分割払いを定める内容)によって実体的に変更される。その後、再生計画による分割弁済を履行すれば債務は完済となる。再生手続きにおいて裁判所が選任する機関として個人再生委員がある(民再二二三条一項)。

個人再生委員の職務は、①債務者の財産や収入状況を調査したり、②再生債権の評価に関して裁判所を補助したり、③再生計画案作成のために必要な勧告する、というものである(同条二項)。再生債権の評価申立てがされたときは、申立てが不適法却下された場合を除き、必ず個人再生委員が選任されることになっているが(同条一項但書)、その他の場合に個人再生委員を選任するか否かは、裁判所の裁量によっており、各地の裁判所は、常に個人再生委員を選任する運用、本人申立てや複雑困難等一定の事案に限って選任する運用等に分かれる。東京地裁は前者であるが、全国的には後者の方が現状では多数である。

特定調停の今後の展望とは

(1)不動産担保がある場合の将来利息カットの取扱いの差異
特定調停の基本方針である将来利息カットは、担保の有無により変わらない。原則どおり、債権者への説得に努める調停委員がいる反面、不動産担保があることで調停成立を躊躇する調停委員も存在し、取扱いが不統一である。裁判所の姿勢として統一されるべきである。

(2)調停前の措置申立て、強制執行停止の申立ての発令
調停前の措置、強制執行停止については、まだまだ十分に活用されていないため、簡裁でも申立てに対して、十分な対応がされていない。また、無担保で発令される簡裁がある反面、担保を要求する簡裁もあり、基準が不明確である。

(3)本店・支店・営業所が存在しないとして特定調停の申請を受理しないケース
自庁処理の申立ての取扱いにより、相手方債権者の管轄がない場合にも、債務者の住所地の簡裁で、調停手続きを受理する運用がある一方で、債権者の支店、営業所がないことを理由に、特定調停を受理しない簡裁もあり、受理の基準を統一する必要がある。

(4)特定調停の今後の展望
調停の申立件数が、二〇〇四(平成一六)年は約三八万件、二〇〇五(平成一七)年は約二七万件、二〇〇六(平成一八)年は約二六万件、二〇〇七(平成一九)年は約二〇万件と年々減少している。これは、司法書士の簡裁代理権付与と過払金返還請求により、これまでは債務が残ると考えられていた債務者が、過払金返還請求訴訟に移行したことがその主な要因であると考えられている。しかし、特定調停には、特定債務者の経済的再生という目的だけではなく、債務整理の一環として、事前措置、執行停止、不動産担保における将来利息カットなど、通常の任意整理と比較しても有利な面が多い。今後もますます特定調停の有効な活用が望まれる。

最近の特定調停における問題点とは

特定調停は、特定債務者の経済的再生に役立つ制度となっているが、反面、問題点も多く改善の必要がある。以下は私見もあるが、今後特定調停が全国的により利用されるためには、重要な点であると考えるものである。一部の簡裁では、債権者が簡裁に提出した取引履歴は調停記録ではないとして、謄写を認めないケースがあり、問題といえる。裁判所の閲覧謄写を認める根拠は、民事調停手続規則二三条にある。すなわち、「当事者又は利害関係人は、裁判所書記官に対し、記録の閲覧若しくは謄写又はその正本、謄本、抄本若しくは事件に関する証明書の交付を求めることができる。

但し、閲覧又は謄写については、記録の保存又は裁判所の執務に差しつかえがあるときは、この限りでない」と、規定する。ほとんどの裁判所では、債務者からの取引履歴の謄写に応じている。一部の簡裁では、謄写請求を特定債務者に勧めて、過払請求ができることについて助言していることもある。このことは債務者の経済的再生が特定調停の目的であり、過払請求はその延長線上であるという考えに立つならば当然である。ところが、取引履歴を調停委員の手控えとして特定債務者に謄写閲覧させない簡裁もあり、そのような取扱いは不当といえるであろう。

なぜなら、取引履歴は特定債務者が、後日、過払請求、過払訴訟を行う場合には必要不可欠な書類である。また、取引履歴は、債務者から債権者に開示請求をすれば当然に開示されるものであり、簡裁が取引履歴の謄写をさせることに差し支えがある理由がないからである。特定調停は、債務者本人の出席のみで進行可能であるが、一部の簡裁では、調停の席上に家族の同席を求め、事実上の返済協力を求めているケースがある。債務の弁済は、債務者個人の義務であり、保証人でもない家族には当然ながら返済義務はない。

万が一、家族を利害関係人に入れて保証人と同一の立場にするような場合には、簡裁の要請を拒否することが必要である。特定調停では調停中立後、調停成立までの利息を付加して調停を成立させていることが多い。一方で、弁護士等が行う任意整理については、弁護士等受任後の利息は付加しない取扱いを慣例化している。よって、特定調停と任意整理では返済金額に大きな差が出ることもあり、このことが弁護士等が任意整理を選択する動機となっている。特定調停においても、利息を付加しない取扱いを全国的に統一する必要がある。

錯誤無効に対する被告の反論と原告の再反論

民事調停法一八条三項は「調停に代わる決定が確定したときは、裁判上の和解と同一の効力を有する」と規定している。裁判上の和解の効力については、判例は大審院から最高裁判所まで一貫して制限的既判力説が採られている。一七条決定は債務名義となり、執行力を有するが、一方で、「調停に代わる決定に既判力があるかどうか」という点については制限的既判力説に立って争うべきである。すなわち、一般的な錯誤無効を抗弁として、調停調書または一七条決定が、過払金があるにもかかわらず「残債務がある」として確定してしまった場合であっても、制限的既判力の立場に立つことにより、要素の錯誤があるとして、争う余地は十分にあるのである。

以上のとおり、特定調停において被告より提出があった取引履歴が取引途中からのものであり、被告に対する過払金の不当利得返還請求権が存することを知らずに、それとは逆に原告が被告に対して残元金の支払義務があるものと誤解してその義務を負う内容の上述調停に応じた場合においては、原告は「原告の行為は、原告や調停委員会を欺く被告の行為によるものであるから、原告はこのような調停に服することができない」として、「当該特定調停は錯誤により無効である」と主張するべきである。一部の取引履歴により調停が成立していることを理由として、過払金返還請求をすることで解決しているケースは実務上数多く存在している。

原告の調停錯誤無効の主張に対して、被告が「調停に代わる決定は訴訟上の和解と異なり、裁判所による公権的紛争解決手段であり、当事者双方のため衡平に考慮し、一切の事情をみて、職権で事件の解決のために必要な決定をするものであり、判決と同様の性質を有するものである。したがって、錯誤無効の主張は許されず、原告が本件決定を覆そうとするならば錯誤無効の主張ではなく再審によるべきである」と主張する可能性がある。被告の上述の主張に対して、原告は「一七条決定が確定したときは、裁判上の和解と同一の効力として調停と同様に原則として既判力を有する。

異議の申立てをしなかったことにつき、要素の錯誤等の実体上の瑕疵が認められる場合は、当事者は、再審によらず当該決定の無効を主張することできる」と解するのが相当である。原告の被告に対する不当利得返還請求権としての過払金返還請求権は、本件決定の既判力による遮断を受けないとする判例(和歌山地新宮支平一八・五・二五判例集未登載)も出されている。ただし、調停錯誤無効について、調停成立後または一七条決定後の過払金返還請求訴訟は裁判所によって判断が分かれているため注意が必要である。なお、「要素の錯誤その他の実体上の瑕疵」については、立証責任が原告にあり、錯誤無効を主張するためには十分な疎明が必要となる。

特定調停成立に瑕疵がある場合の争い方

特定調停の際に、相手方が開示した取引履歴が取引途中であり、その不十分な取引履歴を利息制限法に基づき再計算したため、債務が残るとする調停が成立している場合がある。このとき、本来の取引開始日から始まるすべての取引履歴を利息制限法に基づき再計算をすると、過払金が生じる場合がある。このような特定調停成立に瑕疵がある場合については後述する対応が必要となる。

(1)通常の過払訴訟手続きを行う場合
前述の事例の場合、債権者債務者の間において、本来の取引開始日から、特定調停の際に提出された取引履歴の開始日までの期間については、当該特定調停において判断されていないため、実際の取引開始日からの全取引に基づいた過払金返還訴訟をすることが可能である。訴状の中の請求の趣旨については通常の過払金返還請求訴訟と変わらない。実務的には、訴訟提起をする前に、相手方貸金業者と過払金返還の交渉をし、過払金返還となれば事件は終了だが、交渉が決裂するなど貸金業者が過払金返還に応じない場合は過払金返還請求を目的とする一般調停申立てをしたり、過払金返還請求訴訟を提起することになる。この場合、特に調停調書や一七条決定の錯誤無効は、原告から主張する必要はない。なぜなら、相手方が、調停調書や一七条決定の効力について争わなければ、あえて裁判上で争点とする必要がないためである。

(2)特定調停の錯誤無効について争う場合
特定調停の錯誤無効を争う場合、貸金業者によっては、金銭消費貸借契約そのものが、すでに特定調停により確定しているのであるから、特定調停の既判力により、過払請求は認められないと主張してくるようなケースもある。例えば、原告主張の貸付けのうち特定調停の際に判断された一部の貸金について、原告である債務者が残債務の支払義務を認め、かつ、当事者双方に「その他に債権債務がないことを相互に確認する」という特定調停が成立している場合、貸金業者である被告が、原告の不当利得返還請求が当該調停に抵触するとして、特定調停の既判力を主張する場合などである。この場合、原告となる債務者は、調停における既判力は制限的であるとして、当該特定調停が要素の錯誤により無効であるとして争うことが一般的である。

調停内で過払金があることが確認された場合

特定調停内で過払金の返還までもが認められることはほとんどない。通常、利息制限法に基づく再計算により、過払金があることが確認された場合には、申立人の将来の過払金返還請求権の余地を残すため、「お互いに債権債務は存在しない」というような双方の清算条項は付けずに、「債務は既に弁済により存在しないことを確認する」という片面的な清算条項を付けた調停案や一七条決定が出されることが多い。

このように、過払金が生じているときには、双方の清算条項を付けないようにすることが大切である。なぜなら、双方の清算条項が付いている場合には、申立人の相手方に対する不当利得返還請求権を消滅させることになり、過払金が存在しないということに既判力が生じてしまうからである。申立人は、過払金があるにもかかわらず、一七条決定で清算条項が付いた場合には発令後二週間以内に異議を申し立てる必要がある。

異議申立後は、一七条決定が効力を失うことになるため、その後の手続きは通常の過払金返還請求事件と全く変わりない。なお、計算された過払金が少額であるため、過払金返還請求をするまでもないと判断して、事件を終了させることを目的とするときは清算条項が定められる場合もあるが、現在では清算条項を付ける一七条決定は少なくなっている。申立人の債務が存在しないことを確認する一七条決定の書式例を掲載する。

過払金が生じた場合の調停条項

(1)概要
特定調停は、債務者が返済可能な金額を設定し、債務の返済方法を債務者債権者間で協議して、債務者の経済的再生を目的とするものである。しかし、長期間、利息制限法違反の利息を支払っているような場合には、利息制限法に基づく再計算により債務が大幅に減額するだけでなく、反対に、債権者に払い過ぎた利息に対する請求権が生じていることも珍しくない。しかし、特定調停においては、申立人の貸金業者に対する過払金を取り戻すことを目的とする特定調停が成立することはほとんどなく、申立人の債務がないことを確認するに止まっている。ただし、一部の簡易裁判所では、過払金の返還を認める一七条決定を発令したケースもある。

(2)調停内で過払金返還を認めたケース
特定調停では、相手方から申立人への過払金の返還を内容とする特定調停が成立することはほとんどの場合ない。特定調停は、特定債務者の経済的再生という目的、言い換えれば債務弁済に窮している債務者の生活の立て直しのための制度であり、相手方から過払金を取り返すというような債権回収を目的とするものではないという理由による。ただし、一部の簡易裁判所において、過払金返還が特定調停の目的に沿ったものとして認められた調停が成立した事例もある。

例えば、債権者と債務者の間に、貸金と立替金などの複数の契約があり、立替金については残債務があるのに対し、貸金については過払金が生じている場合、立替金と貸金を相殺することで、実質的に過払金請求が認められているといえる。また、一七条決定の条項において、相手方の過払金債務の支払義務を認めた場合もある。事例を掲載する。これは、一七条決定において、過払金の返還を認めた特殊な例である。なお、この場合、一七条決定内で過払金の返還を認めており、特定調停後に過払金返還をする必要がないため、清算条項が付されている。

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